とある会社から、俺の職場に電話かかってきて、
「原田◯◯さんって人、以前そちらで働いてましたか?」と。



「3〜4年ぐらい前だと思うのですが。というのも、この度、弊社で原田さんの採用を検討しておりまして、彼の当時の仕事ぶりをお伺いしたくてお電話しました。」




てか誰だよおまえ

こういう会社同士の探りってアリなの?

なんかいい気がしなかったけど。






俺がその原田さんという人物を思い出すのには1秒もかからなかった。それどころか、原田◯◯さんという名前を聞いた瞬間に、顔や声のみならず原田さんとの思い出まですべてが瞬間的に脳裏に蘇った。3年の時をまたいで浮かび上がる原田さん。懐かしいなぁ。連絡先も知らないしあれ以来会ってない。40歳ぐらいの小太り体型のおっさん。とても優しい顔。前職はたしか魚屋さんだったけど、東日本大震災で仕事を失いうちの会社に入ってきたって感じだったような。





俺は原田さんに仕事をいろいろ教えた。時には厳しくしたりもした。歳下の俺が偉そうに。原田さんは一生懸命頑張って仕事をしていた。
原田さんは逆に、俺に人生をいろいろ教えてくれた。当時、毎日のように原田さんと一緒に働いていて、仕事が終わる深夜2時ぐらいから朝方まで店の前でいろんなことを2人で語った。仕事のこと。人生のこと。音楽のこと。




趣味で音楽を聴くのが大好きなおじさん。特にハードロックやヘビーメタルが好きで、俺にいろいろ教えてくれた。…これは聴いておけ…あのバンドがかっこいい…バンドはこうあるべきだ…
いろいろ教わった。一番好きなギタリストはSlashだと語ってた。原田さんは音楽の話をしてる時、瞳が輝いていた。俺はそんな原田さんの話を聞くのが好きだった。



原田さんは仕事も頑張っていたけれど、うちの会社では先が見えないと判断して結局すぐ辞めちゃった。でも俺にとっては原田さんと過ごしたわずかな時間がすごく心に残っているよ。原田さん。俺はあの後すぐTHE リマインズというバンドを始め、最初は全然うまくいかなかったけれど(もちろん今もうまくいっている訳ではないけれど)、やりたいことをやって人生後悔しないように日々暮らしています。そちらはお元気ですか。また音楽の話いろいろ聴かせてください。新しい会社でも頑張ってください。てか、また転職するんすか原田さん。転職しすぎっす。また会社と上手くやれなかったんですか。バレてますよ。まさか俺がこの電話とるとは思ってないだろうなぁ。原田さん、俺は相変わらずまだ同じ会社にいます。会社や社長は相変わらずです。バンドも原田さんが言ってたみたいな魅力的なバンドになれてるかはわかりませんが、頑張ってます。いつかライブ観に来てくださいね。オレSlashみたいなギターは弾けないすけど、あれから俺が買った白いレスポールカスタムは原田さんもきっと気に入ってもらえると思いますよ。お互いなんとか頑張っていくしかないみたいなので、ぼちぼち頑張っていきましょう。




「想像以上に仕事できる人なのでご安心ください。」

俺はしっかりとそう伝えて電話を切った。